それくらい大目に見てくれよぉ!
思わぬ「犯罪」実例集!
多くの企業の顧問弁護士も務めている伊藤氏。普通のサラリーマンが日常生活の中で普通にやってることがトラブルに発展し、「犯罪者」を生み出してしまった実例を教えてくれた。 |
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 伊藤芳朗(いとう・よしろう)氏
1960年大阪生まれ。灘高を卒業後、東大在学中に司法試験合格。オウム事件や少年事件、家族問題などに積極的に取り組む知性派弁護士。クレスト法律事務所所長。
■ 著書紹介:『少年Aの告白』(小学館)、『少年法 やわらかめ』(アスペクト) |
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週末、会社のクルマで
彼女と温泉に行った。
会社の車を勝手に使っても、週末や公休日でどっちみち会社が使う可能性はないからいいじゃないか。あるいは、元に戻したんだからいいじゃないか。……などと安易に考えがちですが、これは「使用窃盗」と言われる形態の犯罪です。放置自転車を借りて、また元に戻した場合と同じです。窃盗罪は、他人のものを自分の所有物であるかのようにして使用した時点で既遂[きすい:犯罪が完全に実現していること←→未遂]になります。その後戻したというのは「戻さなかったよりは量刑が軽い」というだけで、罪を免れるわけではありません。
ただし、予め許可を得ておけば何の問題もないわけですから、そういうことはきちんとしておくことが大事です。 |
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友達と飲んだ領収書を経費で落とした。
私用で飲んで貰った領収証をあたかも業務上必要があったかのように装って、会社の経理などに提出した時点で詐欺罪の実行行為があり、お金をもらった時点で詐欺罪は既遂となります。なぜなら、会社が単にあなたが友人と飲んだだけだと知ったら、飲み代を払ってくれるはずがないことが明らかだから。実際にトラブルになった事例もあります。
同じような考え方(積極的にウソを言わなくても詐欺罪が成立する例)として、「つり銭詐欺」があります。これは、お店で品物を買って、店員の勘違いでつり銭を多くもらった場合。明らかに気付いてるのにその場で「多過ぎます」と言わなかったら、店員をだましたことになる、として詐欺罪が成立します。 |
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会社の後輩に休日返上で自分の引っ越しを手伝わせた。
セクハラは女性が被害者となるケースが主流ですが、パワハラの被害者は男女を問いません。上下関係を利用して、他人に義務なきことを(本人が嫌がっているにもかかわらず)押し付けるとパワハラにあたります。さらに「手伝わないと殴るぞ!」などと「害悪の告知」をしてしまうと「強要罪」という犯罪になり、3年以下の懲役となってしまいます。
また、後輩がその場で「嫌だ」と言わなかったとしても、あとから「怖くて嫌だと言えませんでした」などと言われると、やはりパワハラになってしまいます。後からそういうことを言い出さないような人物を選んでお願いしたほうが良いですね。 |
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酔っぱらって隣の客に絡んだ
正式には「酒に酔って公衆に迷惑をかける行為の防止等に関する法律」で、拘留または科料または両方、さらに1年以下の懲役となります。長ったらしい法律ですが、酔っ払って道端で「バカヤロー!」と叫んでいたら捕まることがある。「拘留」とは30日未満監獄に入ること。「科料」とは1万円未満の罰金のようなものです。
また、たとえば東京都では、「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」(これも長ったらしいですね)、俗に言う「迷惑防止条例」があり、酒に酔っていなくても「何人も、人に対し、公共の場所又は公共の乗物において、多数でうろつき、又はたむろして、通行人、入場者、乗客等の公衆に対し、いいがかりをつけ、すごみ、暴力団の威力を示す等不安を覚えさせるような言動をしてはならない」という条文もありますから、ご注意ください。
ところで、酒酔い防止法には、第2条で「すべて国民は、飲酒を強要する等の悪習を排除し、飲酒についての節度を保つように努めなければならない」と、国民の「義務」が書かれています。みなさんは節度、守れてますか? |
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自分のクルマに護身用の特殊警棒を積んでいた
特殊警棒は、軽犯罪法1条2号に言う、「刃物、鉄棒その他他人の生命を害し、又は人の身体に重大な害を加えるのに使用されるような器具」にあたり、持っているだけで逮捕されることもあります。現に私の依頼者は逮捕されました。 |
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いやあ、軽犯罪法って読んでみるとすごい。たとえば「生計の途がないのに、働く能力がありながら職業に就く意思を有せず、且つ、一定の住居を持たない者で諸方をうろついたもの」、つまり浮浪者だって、厳密にいえば犯罪者になってしまうのだ。
次のページでは、痴漢冤罪やWinnyなどサラリーマンが日常生活の中で「犯罪者」になりうる落とし穴を警告しよう。 |
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