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R25 ブック レビュー: ウェブ社会の思想
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今週のテーマ
キミは、“ひとり立ちした大人” になっている?
ねえ、そろそろ僕らは
希望を語ってもいいんじゃないか
これがおじさんの生きる道
大人はわかってくれる?
大人の階段のぼってる?
かつての人物の後ろ姿に学ぶ
ディープなワールドにカモン
■ ねえ、そろそろ僕らは
希望を語ってもいいんじゃないか
『ウェブ社会の思想』 鈴木謙介/NHKブックス/1124円Amazonで購入
昨年あたりから、デフレ不況によって就職機会を奪われた世代の
怒りの声を耳にすることが多くなった。
彼らはいう、「生きさせろ!」「金をよこせ!」と。
しかし一方で、同じ世代の人間が、
悲惨な境遇をまねいたのは「自己責任」だとして、
あきらめの淵に沈んでいる。
本書の著者は、彼らと同世代であり、彼らの痛みを分け持つ社会学者だ。
闘う必要性も絶望に至る心情も、痛いほど理解しているにちがいない。
本書は情報化が招き寄せる「宿命」に繰り返し言及する。が、
この「宿命」という言葉が非常につかまえづらい。
乱暴に解釈すれば、ネットとケータイに代表される情報化によって、
選択肢や情報は増えているのに(増えているがゆえに)、
自分に関わる様々な情報に“選ばされている”感覚、とでもいったらいいだろうか。
おそらく、著者のいう「宿命」のわかりづらさは、
そこに込められている多義的な意味合いと関係している。
あきらめ、自責、閉塞感、不透明感、出口のなさ…、
いわばネガティブ感情の象徴として、
「宿命」という言葉を著者は選び取っているようだ。
よって、本書が提示する、ウェブ社会の未来や世界観は、
決して明るいものではない。
そこには世代的な経験も色濃く反映しているのだろう。
だが、八方ふさがりな未来を示しながら、
本書は「成長」の意味を問い、「希望」を救い出そうとする。
その手がかりとなるのは「他者」と「時間」だ。
闘争でも絶望でもなく、「わたし」の成長へ向けて、
「わたし」の希望を紡ぐこと。
大人になるのは、時間がかかることなのだ。
■ これがおじさんの生きる道
『「おじさん」的思考』 内田 樹/晶文社/1995円 Amazonで購入
憲法9条、教育問題、フリーター問題、私探し、なんでもござれ。
明晰な正論と美しい含羞のいりまじった文章で、心身ともにスッキリします。
圧巻は、夏目漱石を論じた第四章「『大人』になること——漱石の場合」。
「こつこつ働き、家庭を大事にし、正義を信じ、民主主義を守りましょう」と
「正しいおじさんたち」にエールを贈った「成熟」のためのバイブル!
■ 大人はわかってくれる?
『大人問題』五味太郎/講談社文庫/520円 Amazonで購入
多くのユニークな作品を持つ絵本作家による大人のための子ども論。
また、かつて子どもだった大人のための大人論でもある。
声高に主張するのではなく、時にぼやくように、時にはつぶやくように、
子どもとの関わり方について語られている。
読み進めていけば、脳にこびりついた大人の固定観念が
ボロボロとはがれていくだろう。
親になる前に読んでおきたいね!
■ 大人の階段のぼってる?
『大人の太鼓判—これができれば一人前』辰巳 渚/パルコ/1260円 Amazonで購入
それ相応の年齢を迎えてみて、あなたは今の自分が大人だと思えるかな。
どうも自信がないという向きは、こちらでちょいと試してみてはどうだろう?
「暇でも怖くないか」「ボタンをつけられるか」「親離れしてるか」など、
心構えから人との付き合いに至る多くのチェック項目が待ち受けている。
一人前の称号を得られるかどうか——各人の健闘を祈りたい。
■ かつての人物の後ろ姿に学ぶ
『落日燃ゆ』城山三郎/新潮文庫/580円 Amazonで購入
今年、惜しまれつつ物故した城山三郎が描いた、歴史小説の傑作である。
戦乱渦巻く激動の昭和期に、外交官や総理大臣を歴任し、
太平洋戦争後の東京裁判で処刑された広田弘毅。
彼の飾らず驕らない人柄と、命懸けで歴史の流れと向き合った生き様がここにある。
これもまた一つの見事な大人の姿。
風化していく過去を想い、背筋を伸ばして読みたい一冊だ。
■ ディープなワールドにカモン
『ルー炎上! 恥かけ、汗かけ、涙しろ』ルー大柴/マガジンハウス/1260円
Amazonで購入
もういい年だし、いつまでもバカやってられないよと、
すっかり落ち着いてしまうばかりが大人じゃない。
ハイテンションな芸風で知られるタレント・ルー大柴の本を開いてみよう。
過去を振り返りつつ、自分をさらけ出して人生観を開陳する内容だ。
大人といっても一枚岩ではなく、
いろんな年のとりかたがあることを確認して、さぁ彼とトゥギャザーしようぜ!
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